2025年3月、東京都千代田区神田の解体工事現場で、作業員が一酸化炭素中毒により死亡する事故が発生しました。本記事では、この事故の背景と作業環境におけるCO中毒のリスクと対策について解説します。
一酸化炭素中毒のメカニズム
一酸化炭素（CO）は無色・無臭・刺激のないガスですが、非常に毒性が強く、呼吸により体内に取り込まれると血中のヘモグロビンと結合して酸素運搬を阻害します。これにより、脳や心筋など酸素を多く必要とする臓器に深刻な障害を引き起こします。
解体現場でCO中毒が起きる理由
1. 内燃機関の使用
解体工事では発電機、エンジンカッター、重機などの内燃機器が使用されます。これらは不完全燃焼により高濃度のCOを排出します。
2. 換気不良の作業環境
地下や建物内などの密閉空間では、排出されたCOが空気中に滞留しやすくなります。自然換気では十分に排出できないケースも多くあります。
3. 送風機や換気設備の不足・不備
換気設備が不適切、能力不足、または未使用だった場合、CO濃度が短時間で致死レベルに達する可能性があります。
産業医の視点から見たCO中毒の予防策
- エンジン機器の使用は原則屋外、または強制換気下で実施
- 作業前および作業中にCO濃度の測定を実施
- 送風機や排気設備の定期点検と能力評価
- 携帯型CO警報器の着用を義務付け
- 作業員への中毒症状の教育（頭痛・吐き気・めまいなど）
まとめ
神田で発生した一酸化炭素中毒死は、見えないリスクに対する備えの重要性を改めて浮き彫りにしました。産業現場では、内燃機器の使用と換気対策を一体で捉える安全管理体制が不可欠です。