こんにちは!今回は「採用コスト」と「産業保健コスト」を業種別の離職率データとともに比較しながら、コスト削減のヒントを探っていきましょう。
業種別の離職率と採用コストの関係
まずは、厚生労働省が公表している「2022年雇用動向調査(令和4年)」の離職率データを見てみましょう。
・宿泊業・飲食サービス業: 29.9%
・医療・福祉業: 14.9%
・運輸業・郵便業: 13.4%
・製造業: 8.5%
・建設業: 8.1%
(参照元:厚生労働省「令和4年雇用動向調査」https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/13830743/www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/23-2/index.html )
離職率が高い業界ほど、採用コストが膨れ上がりがちです。たとえば「宿泊業・飲食サービス業」の場合、従業員の約3割が1年で辞めてしまう計算になります。これは「コスト削減」とは真逆の状況ですよね。
採用コストを試算してみよう
リクルートキャリアの調査によると、中途採用1名あたりの平均採用コストは約100万円とされています。また、新卒・中途ともに採用者1人当たりの採用コストは年々高くなっているとされ、経営上も無視できない金額になっているのではないでしょうか?
- 求人広告費
- 面接・研修など採用関連の人件費
- 新人教育にかかる費用
(株式会社リクルート「就職白書2020」 :https://shushokumirai.recruit.co.jp/wp-content/uploads/2020/06/hakusyo2020_01-48_up-1.pdf)
たとえば、従業員200名の宿泊業を例にすると、年間離職率29.9%で約60人が辞める可能性があります。
60人 × 100万円 = 6000万円
これほどの採用コストが毎年発生するわけです。まさに「穴の空いたバケツに水を注ぎ続けるような状態」ですよね。
産業保健コストは本当に高いのか?
次に産業保健にかかる費用を見てみましょう。日本医師会「産業医活動並びにストレスチェック制度に関するアンケート調査」を参照すると従業員規模200~299人の事業所における嘱託産業医の契約料の中央値は「月5万~6万円」となっています。つまり、
月5~6万円 × 12か月 = 60万円~72万円
これが一般的な年間コストの目安です。
「産業保健なんて贅沢なのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は逆。産業医による面談や職場巡視、メンタルヘルス対策の支援が離職率低下に大きく貢献し、結果として多額の採用コストを削減できるのです。
離職率を下げるための産業保健の役割
メンタルヘルスの早期発見・ケア
ストレスチェックや定期面談を実施し、不調を見逃さずにサポートすることで離職率低下につながります。
職場環境改善の提案
産業医が職場を巡視し、労働時間や作業負荷をチェック。働きやすい環境づくりをアドバイスします。
従業員とのコミュニケーション促進
産業医や保健師が相談窓口を設けることで、従業員が抱える悩みを早期に解消しやすくなり、職場定着率が向上します。
前述の宿泊業のケースで産業保健に年72万円を投じた結果、離職率が30%から28%に改善しただけでも、年間約400万円の採用コストを節約できたことになります。採用コストの減少額から産業保健に投じた費用を差し引き、トータルで328万円の経費削減につながったと考えられます。「産業保健はコスト」ではなく、「未来への投資」だと言えるでしょう。もちろん会社の状況によって、どの程度産業保健にコストをかけるべきか異なりますので、まずはご相談ください。
~穴の空いた財布を買い替えましょう~
いかがでしたでしょうか?
「採用コスト」と「産業保健コスト」を比べてみると、どうせお金をかけるなら“人が辞めない”仕組みに投資する方が、長い目で見てコスト削減につながることがお分かりいただけたかと思います。
採用にお金をかけ続けるのは、まるで「穴の空いた財布」で買い物をしているようなもの。いくら入れても漏れてしまいますよね。そこを修理(産業保健)することで、離職率低下だけでなく、組織の生産性向上にも期待できます。
「床の抜けた家では安心して住めない」なんて言いますが(いや、言わないか…?)、まずは職場の土台をしっかり固めることが大切です。皆さんの会社が「辞めない職場」を目指すうえで、私たち産業医事務所も全力でお手伝いしますよ! それではまた次回のブログでお会いしましょう!